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  新型肺炎コロナウイルス検査陽性者の
  令和2年3月11日時点の日本の現状と今後の動向  (令和2年3月11日)



    医学統計学研究センターでは、一週間前の3月4日に、この問題に対して、
    新型肺炎コロナウイルス検査陽性者の経時的発生数のデータから、日本の
    これまでの現状と今後の動向について、「何が言えるか」、の私見を報告
    をさせていただきました。

    今回も、3月4日以前の状況と、その後の1週間での状況を、ご覧いただく
    ために前回と全く同様に、1月22日を調査開始日として3月11日まで、
    その日からの経過日数と
 
   (1)一日当たりの新型肺炎コロナウイルス検査陽性者の発生数
   (2)累積発生数

    の二つの図を下に載せました。クルーズ船での出来事は日本とは別世界な
    ので、この図には含まれていません。この図は、前回と同様にJohns Hopkins
    大学のCenter for Systems Science and Engineering (CSSE)が
    開発したinteractive web-based dashboard からダウンロードできる
    real time のGitHub のデータベース(Data sourceはWHO, CDC,
    ECDC, etc)から描いたものです。一方、日本国内では、2月中旬頃から、
    厚生労働省(報道発表資料)が「感染者」の発生数を毎日発表しています。
    累積発生数については、CSSEの報告の方が約 15 名程度多いのですが、
    その発生パターンはほとんど変わりません(なお、検査診断には偽陰性、
    擬陽性の可能性があるので、陽性者を「感染者」とする表現は正しくあり
    ません)。

    前回の報告では、経過日数23日目(2月16日)から3月3日までに新規陽
    性者の発生速度はほぼ一定の一日当たり15人程度の、直線的な増加傾
    向(青の直線)を示しており、他の国々の急増傾向に比べると極めて穏や
    かな感染が継続している雰囲気でした。ところが、皮肉にも、その次の日
    の3月4日から、一日当たりの陽性者発生数が増加し、これまでの直線傾
    向から曲線傾向に変化し始めました。

    この大きな要因は、マスコミでも報道されているように、日本各地のライ
    ブ施設、スポーツジム、等で2月中に発生したと思われる集団感染が顕在
    化してきたことによるものと思われます。この種の集団感染が発生すると、
    有効な対策が打てなければ、理論的には、感染者数が指数曲線的に増加
    するものです。その例として、韓国、イタリア、フランスでは、下の図の
    ように、大変な勢いで、指数曲線的に陽性者数が急増(outbreak)し
    たことがわかります(なお、フランスの累積発生数は図で示されている
    数の5分の1です)。スペイン、ドイツ、アメリカ、も同様の傾向を示し
    ています。

    これらの国に比べると、日本の陽性者数が指数曲線的に急激に増加して
    いる状況ではありません。3月4日頃から曲線的な増加傾向に転じたわけ
    ですが、3月11日までの傾向は、一日当たりの陽性者数が43名程度の直
    線的傾向(赤の直線)を依然示している、と見ることができます。この
    現状は、2月26日から28日にかけて鈴木北海道知事、安倍首相によって
    発表された国民への行動自粛要請が、「2月中に発生した幾つかの集団
    感染にも基づくさらなる感染拡大の阻止にある程度効果があった」と考
    えることもできるかもしれません。

    一方で、国民一人一人の行動が要請どおり自粛されていたとしても、潜伏
    期間が14日程度あることを考えれば、感染拡大は水面下で進行していて、
    今後さらなる顕在化が起きる可能性もあり、その結果として急激な指数曲
    線的な増加傾向に転じる危険性も否定できません。その意味では、3月
    10日の安倍首相による「今後10日間程度のさらなる自粛継続要請」は
    ある程度、理にかなっているとも判断できるかもしれません。

    さて、今後、どうなるか、いずれにしても、まだまだ国民ひとりひとりの、
    過剰ではなく、冷静な行動の自粛が望まれるところです。

    次回は、19日(木)に報告させていただきます。





 Good luck !
 Best wishes
 Center for Medical Statistics

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