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福島第1原子力発電所の事故による放射性物質の健康影響に関する私見

2011323



 これまで、世界各地で起きた放射能汚染の健康影響を検討するために、数多くの疫学調査が実施されてきています。これらの疫学調査で健康影響を評価するために使用されるのが統計学的方法です。統計学の正しい知識と理解の普及を図るというセンターの使命と、また、放射性物質の健康影響に関する疫学調査に携わってきている医学統計学専門家の経験から、今回の福島第1原子力発電所の事故によって、これまでに空中に放出された放射性物質の健康影響について、私見を申し上げたいと思います。

  まず、原発事故といえば、1986年のチェルノブイリ原発事故を思い出しますが、今回の事故とは比べものにな  らないくらいの規模で、国際原子力機関の報告によれば、広島に投下された原爆による放出量の400倍を超える放射性物質が大気中に放出されたと言われています。事故直後に事故の処理にあたった多くの労働者は、当時のソ連政府からその危険性を知らされず、大量の放射能をまともに浴び、多数の死亡者が確認されています。また、世界保健機関によると、大量の放射能に汚染された区域の一部の子供と若年層に発生した700件近い甲状腺癌は高濃度に汚染された地域の牛乳、野菜などを通じて大量の放射性物質を体内に取り込んだためとされています。ただ、それでも汚染された区域外の一般民間人への健康影響の有無についてはいまだに議論の多い問題とされています。
 
  一方、今回の事故はどうでしょうか?政府は、正しい情報を迅速に国民に伝える、として、各地の放射線量のモニタリングの数値を報告しています。例えば、
 
  〇福島県内の牛乳と茨城県内のホウレンソウの検体から暫定基準値を超える放射線量が検出された
  〇栃木県と群馬県は、ホウレンソウとかき菜から暫定規制値を超える放射性物質が検出された
  〇この結果を受けて、政府は、万が一の健康影響を考慮して、これらの県に対して、出荷制限を指示した
  〇福島第一原発近くの海水から、最大で安全基準の126倍にあたる濃度の放射性物質が検出された
 
  しかし、いくら正しい数値を発表しても、この情報の解釈の仕方をきちんと国民に伝えないと、国民の不安は増加するばかりで、風評被害が広がるだけの逆効果となります。これらの数値の解釈に関して言えば、多くの放射性物質の専門家がテレビ、ラジオなどで述べていますが、チェルノブイリ原発事故に比べるとはるかに小さく、現況では健康影響が発生するとは考えにくい量の放射線物質が空中に放出されていると推察されます。
  つまり、
 
  「3月11日に事故が発生してからまだ2週間弱ほどしかたっていない現在において、各地で報道されている放射線量のモニタリングの結果からは(たとえ、半年経過したとしても)、これらの基準値を超えた食品を摂取しても、健康影響があるとは到底考えられない数値です。出荷制限するなど、まことにもったいないことで、何の責任もない生産者には大変気の毒な事です」。
 
  この解釈は、暫定基準値の定義「基準値を超えた食品を長年、食べ続けると、健康被害が出る可能性がある」を正しく理解することからも導かれるはずです。事故当初、今回の事故をチェルノブイリ原発事故と同一視して、いたずらに危険を煽る報道も見受けられましたが、行政、そして、報道する側のより冷静な、風評被害を広げない対応を望みたいと思います。
 

  むしろ、いたずらに危険を煽られ、避難されている方々の不安・ストレスによる健康障害の方がはるかに心配されます。

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