医学統計クリニックからの話題
医学統計学研究センターでは、「医学統計クリニック」として、医学研究における様々な統計相談を随時
受けています。そこで、今回は、最近の事例を一つ紹介しましょう。
ある臨床医からの相談で、ある感染症の季節変動(seasonality)の有無を統計学的に検定したい、という
要望でした。確かに、この話題、統計学の教科書にはあまり掲載されていないかもしれません。ちなみに、
Armitage, Berry, MatthewsらのStatistical Methods in Medical Research, Fourth
Edition(2002)には
seasonal trendの方法としてEdwardsの方法の概略があるだけでした。おそらく疫学のテキストには掲されて
いると思い、Rothman, Greenland, LashのModern Epidemiology, Third Edition (2008)を調べましたが、
掲載されていないようです。一方、拙著「新版 医学への統計学, page 126-128」には、この話題を載せて
おきました。というのも、Tangoも季節変動を検出する方法を検討したことがあるからです。代表的な方法を
年代順に並べると、
Edwards (Annals of Human Genetics, 1961)
Walter and Elwood (British Journal preventive Medicine, 1975)
Rogers (Biometrika, 1977)
Tango (Biometrics, 1984)
などがあります。Walter and Elwoodの方法、Rogersの方法はいずれもEdwardsの方法の改良版です。
これらの方法は対立仮説としての季節変動に正弦曲線(sinusoidal trend)を仮定したものですが、Tangoの
方法は季節変動は、「疾病の周期的な集積性」という考えの下に、正弦曲線を仮定しない方法です。
欧米の文献ではWalter and Elwood の方法、Rogers の方法などが良く利用されているようです。
拙著では、Rogersの方法を適用例とともに解説していますので、興味ある方はご覧ください。
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